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2019/04/29(Mon)
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ニューヨークにて（９）
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ジェイン・ジェイコブズは「アメリカ大都市の死と生」の中で、
彼女が当時住んでいたハドソン通りの歩道が
２４時間の間にどのように使われ方をしているかを、
こんな文体で表現しています（一部を引用）。
わたしの暮らすハドソン通りは、毎日複雑な歩道バレエの場面となります。わたし自身が初めて舞台に登場するのは八時を少しまわってゴミバケツを出しにいくときで、おもしろくもない仕事にはちがいありませんが、でもわたしとしでは自分のパートを楽しみ、自分なりのちょっとした音をたて、その横を中学生の群れが舞台中央に向かって歩き、キャンデーの包み紙を落としていきます（こんな朝っぱらからよくまああんなにキャンデーを食べるもんです！）その包み紙を拾いつつ、朝の他の儀式を見物します。ハルパートさんが洗濯物の手押し車の鍵をはずしで地下室の入り口につなぎ換え、ショー・コルナチーアの義理の息子が雑貨屋からの空き箱を積み重ねて外に出し、床屋は歩道に折りたたみ式の椅子を出し、ゴールドスタインさんが、金物屋が開店中だと示す針金のコイルを並べ、アパートの管理人の奥さんが、まるまるとした三歳の息子にマンドリンのおもちゃをもたせてポーチに放ち、その場で子供は、母親のしゃべれない英語を学んでいます。こんどは小学生たちがセントルーク小学校のほうへだらだらと南進します。（...）身なりのいい、エレガントとさえ言える男女がブリーフケースを抱え、戸口や脇道から登場します。そのほとんは、東へ向かいます。舞台袖からは新しい人々が舞台に登場どはバスや地下鉄に向かいますが、一部は路肩でうろうろして、タクシーを拾っています。そのタクシーは奇跡のようにドンピシャのタイミングで現れますが、それはタクシーもまたもっと広い朝の儀式の一部だからです。
（ジェイン・ジェイコブズ「アメリカ大都市の死と生」より）
“ハドソン通りのバレエ”と呼ばれているこの記述は、
1950年代の界隈のアーバンビレッジとしての
オーセンティシティを広く世に知らしめました。
彼女の意図は、歩道や公園が人々にどう使いこなされている
かも知らずにまちをつくってはいけない、ということを
都市計画家や多くの人々に伝えるところにあったはずですが、
その後に起こったジェントリフィケーションのために、
50年後に、その責任を問われることになっています。
ですが、ここまでお付き合いいただいたみなさまには
すでにお分かりかと思います。
ジェントリフィケーションについて責められるべきは、
まちを愛してまちを良くしようと思った人たちや、
自分たちの表現を、自分たちの居場所を探し求めた
アーティストたちではなく、開発利益を求めるあまり、
まちが万人のものであることを忘れた人たちなのです。
破産ぎりぎりの状態を経験したニューヨーク市は、
この頃からFIRE（Finance, Insurance, Real Estate）といって、
製造業や港湾のまちから、金融、保険、不動産のまちへと
大きく転身を図っています。今この街で起こっていることは、
これらのビジネスの原理を過度に透徹させた結果の産物なのでしょう。
そういうことが、ニューヨークに行ってみてよく分かりました。
写真上は、ハドソン通りの現在の風景です。
左側の改修している３階建ての建物が、
かつてジェイコブズが暮らしていた家です。
写真下は、その２軒隣にあり、当時から営業している
レストラン「ホワイトホース」です。
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